脳梗塞の原因としての大動脈は過小評価されていた

脳梗塞の原因は様々ですが、多くは脳の局所あるいは頸動脈が原因だと考えられていました。非常にたまに大動脈から飛ぶことがあると考えられていました。ところが脳の血管も頸動脈にも取り立てて大きな病変がないにもかかわらず、多発性に脳梗塞を起こしているケースがあります。これは従来、不整脈である。心房細動が原因ではと考えられていました。ところが、心臓が原因と考えられる脳梗塞患者で心臓の中に血栓を見つけられるケースはあまりありませんでした。このため、高齢者によく認める心房細動を見つけるのに、大きな労力が払われてきました。しかしリスクを示すスコア[1] の高血圧、糖尿病は動脈硬化の指標でもありましたし、年齢とともに自然破綻プラークは増えていきますし、脳や下肢疾患の既往は繰り返す大動脈塞栓とも関係があります。また一方でこれほど知られた脳梗塞ですが、30%ほどは原因不明とされていました。さらに、抗凝固薬がアスピリンを上回る再発予防効果がありませんでした。[2]
 
ところが一方で、心臓の動脈硬化と頭の動脈硬化にはある程度の関連があります。全身の動脈硬化という点では共通しているからです。ただ、そこに大動脈の汚れは加味されてきませんでした。非常に多くの汚れが日常茶飯事に飛んでいることが血管内視鏡の研究で明らかになりました。脳梗塞のカテーテルは血栓回収療法と言われ、血栓が脳梗塞の原因となると考えられてきましたが、最近の研究で血栓に見えていると思っていたら、アテローマの中にコレステロール結晶が含まれていたなどが報告されるようになってきました。[3] コレステロール結晶は50μm前後で非常に小さいため、微小な梗塞を作る可能性がありますし、そこで炎症を起こせばよりダメージは大きくなってしまいます。これまでの脳梗塞の原因としてのコレステロール結晶が大動脈からの原因と言うのは実際どれぐらいでどれだけ過小評価されてきたのかが今後の課題になります。
コレステロール結晶の代表例
 
文献
  1. Gage BF, Waterman AD, Shannon W, Boechler M, Rich MW, Radford MJ. Validation of clinical classification schemes for predicting stroke: results from the National Registry of Atrial Fibrillation. JAMA. 2001 Jun 13;285(22):2864-70.
  1. Hart RG, Sharma M, Mundl H, et al.: Rivaroxaban for stroke prevention after embolic stroke of undetermined source. N Engl J Med 378: 2191–2201, 2018.
  1. Shiba M, Fukutome K, Higuchi Y. Involvement of cholesterol crystals in the mechanism of aortogenic cerebral infarction: an angioscopic study. Eur Heart J. 2024 May 13;45(18):1686.
 
上記はPeer review誌を引用して専門家の目で記載しています。