大動脈が原因不明の全身塞栓の原因であった

昔から病理学研究で、上流の血管である大動脈からの汚れが飛んで、末梢の臓器の一部を損傷する塞栓という状態がある事はわかっていました。病理組織の検討で、無症状の人でも全身各臓器に起こっているものの問題ないものと思われていました。[1] しかも、そのほとんどがカテーテル手技や手術であると長年信じられてきました。[2] 誰もそうじゃないと証明することが難しかったからです。血流維持型汎用血管内視鏡により大動脈を観察すると、心臓病及び疑い症例の80%に自然にふわっと綿のように飛ぶ自然破綻プラークが見つかりました。[3] その一部は血管内視鏡の光源に反射し、きらきら光っていました。
これは、あまりに小さいためにCTなどでは検出できませんでした。また、このため、長年生体で起こっていることとしては認識されてきませんでした。手術サンプルも生体内ではありません。どれも生体内で起こっていることではなく血流維持型汎用血管内視鏡だけがそれを同定できました。大動脈自然破綻プラークの成分は、油成分のアテローマ、血栓成分のフィブリン、その他石灰化や内膜の一部の成分があります。特にアテローマの成分であるコレステロール結晶は、プラーク内に存在し、プラークの中で、炎症を起こしプラークの破裂の原因にもなり、そして、炎症成分と一緒に飛んでいくことがわかりました。そして、塞栓を起こした最小血管でも炎症を起こすのです。
 
これは動物実験などで提唱されてきたのですが、人の生体でも本当に起こっているというう事が血管内視鏡によるサンプリングでの組織の病理学的検討でわかってきました。この事は今までアスピリンやコレステロール低下薬で解決できない心臓病の治療としてのターゲット、抗炎症薬の有効性を示しています。
 
参考文献
  1. Liew YP, Bartholomew JR. Atheromatous embolization. Vasc Med 2005; 10: 309 – 326.
  1. Kronzon I, Tunick PA. Aortic atherosclerotic disease and stroke. Circulation. 2006 Jul 4;114(1):63-75.
  1. Komatsu S, Yutani C, Ohara T, Takahashi S, Takewa M, Hirayama A, Kodama K. Angioscopic Evaluation of Spontaneously Ruptured Aortic Plaques. J Am Coll Cardiol. 2018 Jun 26;71(25):2893-2902.
 
上記はPeer review誌を引用して専門家の目で記載しています。