老化や認知症は克服できる?
最近認知症を予防する12の因子というのが報告され、認知症は予防できるかもしれないといわれ始めています。[1]
報告書 概要
若年死亡率の低下に伴い、認知症を含む高齢者の数は増加している。しかし、教育、栄養、ヘルスケア、ライフスタイルの変化などの改善により、多くの国で認知症の年齢別発症率は低下している。全体として 2020年のLancet Commission on dementia prevention, intervention, and care [1]でモデル化された認知症の9つの潜在的な危険因子である、教育不足、高血圧、聴覚障害、喫煙、肥満、うつ病、運動不足、糖尿病、社会的接触の少なさを支持するエビデンスが増えてきている。認知症の危険因子をさらに3つ追加し、説得力のある新しいエビデンスを得た。これらの因子は、過度のアルコール消費、外傷性脳損傷、大気汚染である。我々は新しいレビューとメタアナリシスを完成させ、認知症予防の12の危険因子のライフコースモデルを更新した。修正可能な12の危険因子を合わせると、世界の認知症の約40%を占めており、理論的には認知症を予防または遅らせることが可能である。予防の可能性は高く、認知症の発生が多い低所得国や中所得国(低中所得国)ではより高い可能性がある。
この中の1部は生活習慣病が関係しています。中年期の生活習慣病の存在が老年期以降の認知症に関係するという報告が出始めています。ただこれは海外のデータで日本ではなかなかデータを出すのが困難かもしれません。と言うのも何十年の長期間にわたり観察するという事は、日本においては、研究者の研究寿命よりも長いわけです。
疫学という「前向きに期間長く観察していたら、この病気になった」「なになに薬を投与していたら認知症が改善した」という研究だけでは、なぜその因子と病気とかつながるかを正確に示す事は困難です。期間がかかりすぎます。その因子がどうして病気をもたらすかは根気よく調べていかないといけません。
最近、血流維持型汎用血管内視鏡によって大動脈を観察することが可能になりました。[2]それまではCTで大動脈を立体画像にしておおよその汚れのひどさを判定していたのですが、パラパラと飛んだり血管の壁から出血している事は造影するCTでは証明することができませんでした。血管内視鏡は血管の壁を直接観察するので、CTでわからない細かい自然破綻プラークを見つけることが可能になりました。自然破綻プラークは心臓病患者及び疑い症例の80.9%にあり、日常のように汚れがパラパラと飛んでいくことがわかりました。[3]
汚れが飛んでいくとどうなるか末梢の細い血管で詰まります。その部分の臓器が小さく塞栓を起こします。栄養がもらえなくなるから、その一部は死んでしまうわけです。日常のように大動脈自然破綻プラークが飛んでいることがわかったわけですが、という事は、臓器の能力はだんだん落ちていくと言うことに関係していると考えられます。[4] 頭で言えば認知症です。また全身でいえば老化と片付けられてきたものになります。これが循環器分野だけでなく、循環器を通して全身の臓器、老化解明のカギになると考えられます。